日本語の発達も途中で幼児に英語を始めても大丈夫?

日本語もまだ発達の途中なのに、英語教育を始めて大丈夫?混乱しないかというご質問(ご心配)です。

うちの子は日本語もまだ上手に話せないのに、英語を始めたら混乱して、わけがわからなくなってしまうのでは?・・・・

幼児・小学生のお子さんをもつ保護者の方から、いただいた質問です。日本語の力がまだ育っている途中だからこそ、「今は日本語を優先すべきでは」と迷うのは、お子さんを大切に思うからこその自然な心配ですよね。

でも!英語を始めること自体が日本語の発達を妨げるという根拠はありません。大事なのは「いつ始めるか」よりも、日本語をしっかり覚えながら、無理のないようにして英語に触れさせることです。

文部科学省の学習指導要領や関連資料、米国言語聴覚士協会(ASHA)の見解をもとに、不安の正体と、日本語を守りながら英語を始めるコツをわかりやすく解説します。

 

日本語が発達の途中でも、英語を始めて「混乱」する心配は基本的にありません

ポイントは3つです。

・2つの言語を学ぶこと自体が、言葉の遅れや問題の原因になるわけではないとされています(ASHAの見解)

・文部科学省の学校教育も、日本語を土台に英語を学ぶ設計になっています

・むしろ心がけたいのは、英語より先に日本語の土台をしっかりさせることです。

 

なぜ英語を始めると混乱する?

頭の中の言葉の容量は決まっていて、英語を入れると日本語が押し出されるのではというイメージだと思います。お子さんが日本語の文に英語の単語を混ぜて話すと、「やっぱり混乱している」と感じやすいものですが、この「言葉を混ぜる」現象は、2つの言語に触れる子どもによく見られるもので、ASHAなどの専門機関は混乱や言語の問題のサインではないとしています。

 

2つの言語を学んでも言語の問題は起こらない

ASHAの保護者向け資料「Learning More Than One Language」では、世界中の子どもたちが2つ以上の言語を学んでも、話し言葉や言語の問題は生じないと説明されています。また、2つの言語の力は「その子が両方の言語を使う経験の質と量」によって育つとされています。

問題は「言語の数」ではなく「経験の質と量」にあることです。

 

文部科学省の方針

文部科学省の学習指導要領では、小学校3・4年生の外国語活動の目標に「日本語と外国語との音声の違い等に気付く」ことが含まれています。5・6年生の外国語科では、音声だけでなく、文字・語彙・表現・文構造・言語の働きなどについても日本語との違いに気づくことが求められています(小学校学習指導要領解説 外国語活動・外国語編)。

学校の英語教育は、日本語を置き換えるのではなく、日本語という土台と比べながら言葉への気づきを深める設計になっています。さらに、学習指導要領の改訂では、国語教育との連携を図り、日本語の特徴やよさに気づく指導を充実させることも示されています。

 

国語は英語の何倍も学んでいる

小学校の授業時数(学校教育法施行規則 別表第一)を見てみると国語:1年306時間、2年315時間、3・4年各245時間、5・6年各175時間、外国語活動(3・4年):各学年35時間、外国語(5・6年):各学年70時間となっており、5・6年生でも国語は年間175時間で、英語(70時間)の約2.5倍。3・4年生では国語245時間に対して外国語活動は35時間と、7倍にあたります。日本の学校教育は、日本語の力をしっかり育てることを軸に、英語を加えていることになっています。

 

「日本語の力」が英語の土台

文部科学省委託の研修資料(外国人児童生徒等教育の考え方)では、キーワードのひとつに「二言語相互依存仮説」が挙げられています。これは、言語学者カミンズが提唱した考え方で、2つの言語はまったく別々に育つのではなく、深いところで共通する力(理解力や思考力など)でつながっている、というものです。同資料では「ことばの力と思考力は車の両輪となって伸びる」とも説明されています。

日本語で「考える力」「説明する力」「語彙」を育てると、英語学習にも生きること、反対に、英語だけを急いで詰め込み、日本語での会話や読み聞かせが減るのは本末転倒だということ。

 

日本語を守りながら英語を始める

・家庭では日本語での会話・読み聞かせを減らさないようにします。英語を始めても、日本語で語りかける時間を確保しましょう。

・英語は「短く・楽しく・毎日少しずつ」、幼児は歌・絵本・遊び、小学生は音声に慣れることを中心にします。

・日本語と英語の「違い」、「りんごは英語でapple、音が違うね」という気づきは、学習指導要領のねらいにもなります。

・日本語に英語が混ざっても、訂正せず受け止める。内容に反応し、必要なときは自然に言い直して返してあげましょう。

・お子さんの様子を見て、ペースを調整します。疲れや嫌がるサインがあれば、頻度や時間を見直します。

 

よくある質問

 

Q. 日本語がしっかりしてから英語を始めたほうがいいですか?

A. 「待たなければならない」という根拠は確認できませんでした。ご家庭の方針と、お子さんの様子に合わせて、日本語の時間を守りながら始めれば十分です。

Q. 日本語に英語の単語が混ざります。直したほうがいいですか?

A. ASHAは言葉を混ぜることを混乱のサインではないとしています。内容にしっかり反応し、押しつけず自然に言い直す程度で大丈夫です。

Q. 英語を始めると日本語の語彙が減りませんか?

A. 日本語に触れる量が極端に減らなければ、心配しすぎる必要はありません。日本語の会話・読み聞かせの時間を守ることが何より大切です。

Q. 学校の英語だけで十分ですか?

A. 学校の授業は日本語を軸に設計されています。家庭での英語は「学校の授業を楽しく受けるための土台づくり」として、無理のない範囲で取り入れるのがおすすめです。

 

まとめ

日本語が発達の途中でも、英語を始めること自体を心配する必要はありません。大切なのは「言語の数」ではなく、日本語・英語それぞれに触れる「経験の質と量」です。

日本語での会話や読み聞かせを減らさず、英語は短く楽しく続けましょう。

 

参照先

文部科学省「小学校学習指導要領解説 外国語活動・外国語編」(中学年の目標「日本語と外国語との音声の違い等に気付く」、高学年の「日本語との違いに気付く」)
文部科学省委託 研修用動画コンテンツ「外国人児童生徒等教育の考え方」(二言語相互依存仮説、ことばと思考)
文部科学省「小学校学習指導要領」の授業時数(学校教育法施行規則 別表第一)。今回は教科書会社(啓林館)の掲載表で確認
国語教育との連携・日本語の特徴への気づき(学習指導要領改訂のポイント、同上の啓林館資料)
米国言語聴覚士協会(ASHA)「Learning More Than One Language」
ASHA Practice Portal「Bilingual Service Delivery」

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