
うちの子には、フォニックスのワークを始めたほうがいいのか? それとも、英語の絵本や歌で自然に触れさせるだけで十分なのか?
幼児の英語学習について、保護者の方からとてもよく寄せられる質問です。大切なことは「どちらか一方を選ぶこと」二者択一ではなくて、順番と組み合わせだと思います。
フォニックスとは何かをわかりやすく解説して、文部科学省の学習指導要領が音声と文字の学習をどうとらえているのかを解説して、幼児期から小学校低学年までの無理のないすすめ方を説明します。
概要
幼児期の土台は「音」です。絵本の読み聞かせ、歌、リズム、言葉遊びで、英語の音にたっぷり触れることが先です。
フォニックスは文字に興味が出てきたころから、遊びの延長として少しずつ取り入れるのが無理のない方法です。最初からフォニックスは無理があります。
文科省の学習指導要領も、小学校の外国語では「音声に慣れ親しんでから文字へ」という流れを基本にしています。
自然に触れるとフォニックスは対立するものではなく、音から文字へとつながる方法の前半と後半になります。
「自然に触れる」と「フォニックス」
自然に触れる(絵本・歌・動画・会話など)とは、意味のあるまとまりの中で英語の音やリズムを理解していく方法です。母語を身につけていく過程に似ていて、「聞く・話す」の土台や、英語への親しみをつくる方法です。
フォニックス(文字と音の規則を学ぶ)はアルファベットの文字と音の対応を規則として学び、初めて見る単語でも音を手がかりに読めるようにする方法です。
幼児期にまず必要なのは前者の土台で、後者はその土台の上に積み上げていくイメージです。
フォニックスとは?
フォニックス(Phonics)とは、英語の文字や文字の組み合わせと、それらが表す音との関係を学ぶ学習方法です。英語圏の子どもが英語の読み書きを学ぶ場合にも用いられています。
例えば、アルファベットの「B」の名前は「ビー」ですが、単語の中では「ブ」に近い音を表します。「C」は「シー」という名前ですが、catの中では「ク」に近い音になります。
フォニックスでは、このような文字と音の関係を学び、初めて見る単語を読み解く力につなげていきます。
フォニックスの得意なこと
初めて見た単語を、音を手がかりに読もうとする力が育ちます。綴りの規則性に気づきやすくなります。
フォニックスの苦手なこと
英語の綴りには、規則どおりに読めない単語(the, said, one など)も少なくありません。フォニックスだけで全部が読めるようになるわけではなく、よく出る語は「見て覚える」学習も併用します。
日本語(ひらがな)との違い
ひらがなは、基本的に1文字が1つの音に対応しています。一方、英語は文字と音の対応が複雑です。だからこそ、英語では「文字の名前」だけでなく「文字の音」を知ることが読みの助けになります。
文部科学省の考え方
小学校の学習指導要領では
2017年(平成29年)に告示された小学校学習指導要領(2020年度から全面実施)では、小学校3・4年生に「外国語活動」、5・6年生に教科としての「外国語科」が位置づけられました。解説書(『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編』)を整理すると、次のような流れが読み取れます。
文部科学省が作成した教材(Let’s Try!/We Can!)も、各ユニットがまず「聞くこと」「話すこと」から始まり、音声に十分慣れ親しんだあとで「読むこと」「書くこと」へ進む構成だと紹介されています。
なお、こうした流れの背景には、小学校で音声中心に学んだことが中学校での文字の学習にうまくつながっていない、という課題認識がありました。そこで、小学校の高学年で「読む・書く」が加わり、音から文字への橋渡しが重視されるようになったのです。
幼児期について
幼児期の教育の基準である「幼稚園教育要領」(2017年告示、2018年4月施行)では、領域「言葉」のねらいに、絵本や物語に親しみ、言葉に対する感覚を豊かにすることが示されています。内容の取扱いでも、言葉の響きやリズム、新しい言葉や表現に触れ、使う楽しさを味わえるようにすること、絵本や物語に親しんだり言葉遊びをしたりすることがあげられています。
幼稚園教育要領は英語学習そのものを定めたものではなく、あくまで母語である日本語を中心とした「言葉」の育ちについての基準です。ただ、「音の響きやリズムを楽しむ」「絵本に親しむ」ことが言葉の土台になるという考え方は、英語の学びにも通じるものとして参考になります。
ここから言えること
小学校の外国語は、「まず音声に十分慣れ親しむ → そのうえで文字へ」という順序で設計されています。
小学校の学習指導要領は、音と綴りの規則の直接指導を求めているわけではない(フォニックスを家庭や教室で取り入れる場合は、学校の授業とは別の補い方になる)
フォニックスが「いけない」という意味ではありません。学校で必ず体系的に学べるとは限らないぶん、家庭で遊びながら補う価値はあります。ただしそれは、音の土台ができてからのほうが、子どもにとっても自然だと思います。
保護者のよくある疑問 Q&A
Q1. 親の英語の発音に自信がありません。大丈夫ですか?
A. 大丈夫です。音源つきの絵本や教材、映像を活用すれば、正しい音は補えます。保護者の役割は「教える人」ではなく、「一緒に楽しむ人」。楽しそうに聞いたり、真似したりする姿が、お子さんの意欲を支えます。
Q2. 日本語もまだなのに、英語の文字は早すぎませんか?
A. 日本語のひらがなへの関心が出てきた時期に重ねるくらいが自然です。無理に先取りする必要はありません。日本語の絵本の読み聞かせも、言葉の感覚を育てる大切な時間として続けてください。
Q3. 1回どれくらいの時間が目安ですか?
A. あくまで目安ですが、幼児は集中できる時間が短いため、5~10分程度の短い時間を、楽しく続けるのがおすすめです。
Q4. 小学校に入れば、学校で身につくのでは?
A. 小学校では3年生から外国語活動、5年生から教科としての外国語が始まりますが、前述のとおり、音と綴りの規則を体系的に教えることを前提とした設計ではありません。音に慣れ親しんだ状態で進級できると、読み書きが加わる高学年に入りやすくなります。
参考資料
文部科学省『小学校学習指導要領(平成29年告示)解説 外国語活動・外国語編』(掲載ページ)




