
2020年度から小学校で英語が正式な「教科」となり、5・6年生は年間70単位時間、3・4年生も「外国語活動」として35時間学ぶようになりました。小学生は今や英検に合格し、アルファベットを流暢に発音できる子も珍しくないのに、中学生の英語力が下がっているというのです。
文部科学省が2024年に全国約10万人の小学6年・中学3年を対象に実施した「経年変化分析調査」では、2021年の同一問題との比較で英語の平均スコアが低下しており、その下げ幅は、国語や数学を大きく上回っていました。
「基礎がわからないまま授業が進む」「話せと言われても何から始めればいいか」など、教師がこう語る背景には、構造的な問題があります。
文科省データが示す「英語力低下」の実態
書く力の低下
2021年と2024年の同一問題比較では、「書く」問題のほとんどで正答率が5ポイント以上低下しました。一人称単数過去進行形の肯定文を正しく書く問題の正答率は27.2%から19.2%に落ち込み、基本的な語句や文法事項の理解不足が指摘されています。
「was playing」のような中1レベルの文法でさえ、約5人に1人しか正確に書けない??これは英語教育改革の深刻な副作用です。
話す力も低下
「話す」問題では、現在進行形を理解して応答する問題の正答率が2021年の41.7%から2024年には30.8%へと、10.9ポイントも減少しました。また特筆すべきは無解答率の上昇で、「話す」問題で何も答えられなかった生徒が6%以上増えており、「何から手をつければいいかわからない」という生徒が急増している現実が浮き彫りになっています。
「話せる英語」を目指した改革が、むしろ「何も話せない生徒」を増やしてしまっている。この逆説が、現在の英語教育の核心的な問題です。
英検3級相当以上の中学生は全国で52.4%
文部科学省「令和6年度英語教育実施状況調査」によれば、CEFR A1レベル相当以上を達成した中学生の割合は52.4%で増加傾向にあるものの、政府が掲げる2029年度目標(60%)にはまだ届いていません。
深刻なのは自治体格差で、同調査の都道府県別データでは最高89.2%(福井県)から最低34.5%(大阪府)まで約55ポイントもの開きがあります。どこで生まれ育つかが英語力を大きく左右する、不公平な現実があります。
なぜ? 小中接続「3つの断絶」
指導スタイルの急変
小学校英語の中心は「コミュニケーション活動」です。歌、ゲーム、ALTとの会話??子どもたちは「英語は楽しいもの」として体験します。ところが中学校に入った途端、文法説明、アルファベット筆記、単語テストと一気に「勉強」モードに切り替わります。
このギャップで英語嫌いになる生徒が続出しているのが現状です。
語彙・文法量が一気に増加
2021年度施行の現行学習指導要領では、小学校で約600?700語、中学校で約1600~1800語と、学ぶべき語彙数が大幅に増えました。しかし小学校で音声中心に「ふんわり」覚えた単語が、中学校で「読む・書く」に使えるレベルで定着していないケースが多いのです。
文科省はこれらの結果を受け、次期指導要領の改訂に向けて、小中高で扱う単語の重要度を整理し、語彙数を見直すことで負担を軽減する方向性を検討しています。
教師間の情報連携不足
文部科学省が令和5年度に優秀な中学校14校とその学区の小学校を訪問したヒアリング調査では、小中で教科書やパフォーマンス動画を相互に見合う研修会の実施や、中学校英語教師が小学校で乗り入れ授業を行うことで、小中ギャップ解消への効果が確認されました。
逆に言えば、こうした連携を行っていない学校が大多数ということです。小学校の担任は「中学で何を求められるか」を知らず、中学の英語教師は「小学校でどこまで学んできたか」を正確に把握していない??このすれ違いが日本全国で起きています。
「英語で授業」原則化の落とし穴
中学校の学習指導要領では「授業は英語で行うことを基本とする」と定められています。しかし令和6年度調査では、英語担当教師が発話の半分以上を英語で行っている学校の割合は全国平均約41.6%(全科目合計)にとどまっており、自治体間でも大きな差が見られます。
英語で教えることを「義務」にしたものの、教師の英語力や生徒の習熟度が追いついていない現実があります。同調査では、CEFR B2レベル(英検準1級相当)以上の英語力を有する中学校英語担当教師の割合は全国平均46.2%で、依然として半数以下です。
教師が自信を持って英語で授業できない環境では、生徒が本物の英語に触れる機会も限られます。
データが示す「効果のある指導」
では、英語力が高い学校は何が違うのか。文部科学省が横浜国立大学に委託した専門的分析によれば、生徒の英語による言語活動や教師の英語使用の割合、教師の英語力が高い学校ほど、CEFR A1以上の生徒の割合が高い傾向があります。また、ICTを活用した遠隔地とのやり取りや、ALTの授業内での活動(生徒の発言へのフィードバックなど)も生徒の英語力に効果があることが確認されました。
つまり、英語力を伸ばすのは「本物のコミュニケーション体験」です。教師が英語で話しかけ、ALTがリアルにフィードバックし、ICTで世界とつながること、これが機能している学校では、着実に成果が出ています。
保護者と生徒が知るべき「今すぐできる対策」
学校の環境を待つだけでは間に合わないかもしれません。次のアプローチが効果的です。
中1の最初の3ヶ月が分岐点
英語力の二極化は中学1年の前半で起きます。アルファベットの筆記、基本動詞の変化、Be動詞と一般動詞の区別??これらの「基礎の基礎」を中1の段階でしっかり固めることが、その後の3年間を左右します。
「小学校で習ったから大丈夫」と思わず、書いて確かめる習慣をつけましょう。
音と文字を結びつける練習
小学校英語は音声中心で、文字との接続が弱い生徒が多いです。単語を「見る・聞く・書く・声に出す」の4技能セットで練習することで、記憶への定着率が上がります。
週に1回でも「英語で話す機会」を
文科省の分析では、ICTを通じた遠隔地の英語話者との個別会話が実施レベル一段階高い学校では、CEFR A1以上の生徒の割合が2.21%高いことが示されています。オンライン英会話(週1回30分でも可)で、学んだ表現を実際に使う機会をつくることが重要です。
「わからない」を放置しない
「書く」の無解答率が急増していることが示すように、英語では「わからないまま進む」状態が最も危険です。学校の定期テストや小テストで間違えた問題は、その週のうちに必ず理解し直す習慣を。
参考資料
文部科学省「令和6年度英語教育実施状況調査」(2025年9月)
文部科学省・国立教育政策研究所「令和6年度全国学力・学習状況調査 経年変化分析調査結果」(2025年)
文部科学省「令和5年度 学力調査を活用した専門的な課題分析に関する調査研究(英語)」(2024年)
文部科学省「中学校外国語:移行期間における指導資料(小中接続・帯活動)」
英会話スクールに子供を通わせる前に検討することと注意点について詳しく解説
この記事は文部科学省・国立教育政策研究所の公表データをもとに、英語伝編集部が独自に分析・執筆したものです。


