
「小学5年生から英語が始まったけど、学校では何を教えているの?」「家でどんなサポートをしてあげればいいの?」そんな疑問を持つ保護者の方も多いのではないでしょうか。
文部科学省は「小学校学習指導要領解説 外国語活動編」において、小学校5・6年生の英語教育の目標・内容・指導方針を明確に定めていますが、この公式文書は専門的な表現が多く、保護者の方には読みにくいのが正直なところです。
学習指導要領の外国語活動編の要点を、小学生のお子さんをもつ保護者の方向けにわかりやすく解説します。「学校では何をねらいとしているのか」を知っておくと、家庭でのサポートがぐっとしやすくなります。ぜひ最後までお読みください。
「外国語活動」とは?
小学校への外国語(英語)活動の導入は、20年以上にわたる議論と試行錯誤の末に実現しました。学習指導要領解説によれば、その背景には次のような理由があります。
グローバル化への対応
21世紀は「知識基盤社会」と呼ばれ、異なる文化・言語をもつ人々と協力する力がますます求められています。英語はその際の主要なコミュニケーション手段として世界中で使われており、学校教育での対応が急務とされました。
中学校スタートでは「手遅れ」
従来は中学校から英語学習が始まりましたが、入学直後からあいさつ・自己紹介・読むこと・書くことの4技能を一度に扱うため、指導の難しさが指摘されていました。「あいさつや自己紹介など音声を中心とした活動は、むしろ小学校段階になじむ」との判断から、小学校での導入が決まりました。
すでに多くの学校でやっていたが、バラバラ
調査では、平成19年度には全国の小学校の約97%が何らかの英語活動を実施していましたが、内容・質・時間数にばらつきが大きく、「教育の機会均等」の観点から、国として共通の内容を定める必要が生じたのです。
こうした経緯を経て、平成20年(2008年)に学習指導要領が改訂され、小学5・6年生に「外国語活動」が正式に位置づけられました(年間35時間、週1コマ相当)。
外国語活動の3つの目標―学校は何をめざしているのか?
学習指導要領では、外国語活動の目標を次の一文で示しています。
「外国語を通じて、言語や文化について体験的に理解を深め、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度の育成を図り、外国語の音声や基本的な表現に慣れ親しませながら、コミュニケーション能力の素地を養う。」
少し難しい表現ですが、3つの柱に分けると、こういうことです。
言語や文化への理解を深める
英語を通して「日本語と英語はこんなに違うんだ」「外国にはこんな習慣があるんだ」という気づきを体験させることがねらいです。
具体的な例として、学習指導要領には次のような記述があります。
「日本語の『ミルク(mi-ru-ku)』は3音節だが、英語の milk は1音節。日本語のリズムで発音すると英語に聞こえない」
このような「言葉の違いへの気づき」が、言語や文化への興味・関心の出発点になります。外国語への理解は同時に、日本語や日本文化を見直す視点にもつながります。
積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度
「うまく話せなくても、伝えようとする気持ち」を育てることが重視されています。
学習指導要領は「自分の感情や思いを表現したり、他者のそれを受け止めたりするための表現力が乏しいことにより、他者とのコミュニケーションが図れないケースが見られる」と指摘しており、英語活動を通じてコミュニケーションそのものへの積極性を育むことが大切だとしています。
ジェスチャーや表情など「言葉によらないコミュニケーション」も大切な要素として位置づけられています。
英語の音声や基本的な表現に慣れ親しむ
子どもの「柔軟な適応力」を活かして、英語特有の音・リズム・イントネーションに自然に慣れさせることをねらっています。
大切なのは「慣れ親しむ」こと。文法を細かく教えたり、難しい表現を覚えさせたりすることは、この段階の目標ではありません。「聞くこと」「話すこと」を楽しく体験することが中心です。
具体的に何を学ぶの?―2つの柱
授業の内容は大きく2つに分かれています。
「コミュニケーションに関すること」
英語を使ってコミュニケーションを体験することに関わる内容です。
外国語でコミュニケーションを図る楽しさを体験すること
学習指導要領は「自転車と同じで、乗り方を知っているだけでは乗れない。コミュニケーションの楽しさは、実際に体験してこそわかる」と説明しています。
積極的に外国語を聞いたり話したりすること
まず「聞く・話す」の音声面を中心に据え、子どもに過度な負担をかけないようにしています。
言語でコミュニケーションを図ることの大切さを知ること
多くの表現を覚えることより、「言葉を使って伝え合うことの大切さと難しさ」を実感させることが優先されています。
「言語と文化に関すること」
言葉と文化を体験的に理解することに関わる内容です。
英語の音声やリズムに慣れ、日本語との違いに気づくこと
歌やチャンツ(リズムにのせた英語の口慣らし)を通じて、英語のリズムを体で感じる活動が行われます。
日本と外国の生活・習慣・行事の違いを知ること
食事・遊び・地域の行事など、身近な話題を通じて「世界にはさまざまな見方・考え方がある」ことに気づかせます。
異なる文化をもつ人々と交流する体験をすること
ALT(外国語指導助手)や地域の外国人との交流を通じて、異文化理解を深めます。
授業で扱うコミュニケーション場面の具体例
学習指導要領に例示されている場面や表現を、わかりやすくまとめると次のとおりです。
よく使われる場面
あいさつ(Hello. How are you?)、自己紹介(Hi, my name is Taro.)、買い物(What do you want? / Banana, please.)、食事(What would you like? / Soup, please.)、道案内(Go straight. Turn left.)など。
子どもの身近な場面
家庭での生活(What time do you get up?)、学校での学習(On Monday, I study Japanese.)、地域の行事(Let’s clean the beach.)、遊び(Rock, scissors, paper.)など。
「英語を教科にしない」理由―評価やテストはどうなる?
小学校の「外国語活動」は、教科ではありません。国語・算数・理科・社会などの教科と異なり、数値による成績評価(点数・通知表の5段階評価など)はなじまないとされています。
その理由は、外国語活動の目標が「知識・技能の習得」よりも、「態度・体験・気づき」にあるからです。英語をどれだけ正確に話せるか・書けるかより、「コミュニケーションを楽しもうとしているか」「異文化に興味を持てているか」という姿勢の育成が優先されています。
保護者へのポイント
テストの点数や英語の正確さで子どもを評価するのではなく、「英語が好きになったか」「話そうとする意欲が育ったか」を大切にして見守ってあげましょう。
授業はどんなふうに行われるの?
5年生と6年生では内容が違う
5年生
英語を初めて学習することを踏まえ、「友達とのかかわり」を大切にした身近で基本的な活動が中心。あいさつ・自己紹介・買い物・学校生活・遊びなど、自分や身近な話題についてやり取りします。
6年生
5年生の経験をもとに、「世界へのつながり」に関する活動へ発展。世界のさまざまなあいさつ・世界の文字・世界の子どもたちの生活・将来の夢などを扱い、国際理解をより深めます。
担任の先生が中心、ALTが協力
授業は学級担任の先生が中心となって行います。担任の先生は子どもをよく理解しているため、「英語への不安を取り除き、失敗を恐れない雰囲気をつくる」うえで欠かせない存在です。
同時に、ALT(外国語指導助手)やネイティブスピーカー、地域の外国人などが協力することで、本物の英語コミュニケーション体験が提供されます。また、CDやDVDなどの視聴覚教材の積極的な活用も奨励されています。
他の教科とも連携する
外国語活動は他の授業とも結びついています。
国語科:日本語と英語の違いへの気づきが、言葉への関心・国語力向上にも相乗効果をもたらす。
音楽科:リズム感の学習が、チャンツや英語の歌への慣れ親しみに活かされる。
図画工作科:作品をShow & Tell(英語での発表活動)で紹介するなど、表現活動と連携。
保護者が知っておきたい3つのポイント
学習指導要領の内容から、家庭教育にとって特に重要な3つのポイントです。
「正確さ」より「積極性」を褒めよう
外国語活動のねらいは、英語をきれいに話せるようにすることではなく、「積極的に伝えようとする姿勢」を育てることです。発音が多少違っていても、文法が間違っていても、「言おうとした!」ことを褒めてあげることが、子どもの英語へのやる気を大きく左右します。
「発音が違う」「変な英語」などと指摘するのは禁物です。子どもがせっかく育てた「話したい気持ち」を萎縮させてしまいます。
文法の先取り・詰め込みは逆効果
学習指導要領は明確に、「中学校段階の文法などを単に前倒しするのではなく、あくまでも体験的に聞くこと・話すことを通して音声や表現に慣れ親しむこととしている」と述べています。
また「発音と綴りとの関係については、中学校段階で扱うものとされており、小学校段階では取り扱わない」とも明記されています。
市販の英語ドリルや文法参考書を先取りさせることが、必ずしも子どものためになるとは限りません。焦りすぎず、まずは「英語を好きになること」を最優先にしましょう。
日本語・日本文化への誇りも一緒に育てる
外国語活動の目標には、外国語や外国文化を学ぶとともに、「国語や我が国の文化についても理解を深めること」が含まれています。
英語を学ぶことは「日本のことを英語で世界に発信する力」にもつながります。お子さんが学校で「日本の食文化」「地域の行事」「じゃんけんの説明」などを英語で紹介する活動をしてきたら、「すごいね、英語で日本のことを伝えられたんだね」と一緒に喜んであげましょう。
家庭でできる!外国語活動を活かすサポート法
学校の英語活動の話を聞いてあげる
「今日の英語の授業、どんなことをしたの?」と聞いてあげるだけで、子どもは学習内容を振り返り、定着させることができます。発表できたことを一緒に喜んだり、「先生やALTの先生はどんな人だった?」と興味をもって聞いてあげたりするだけで十分です。
英語の歌・動画を日常に取り入れる
授業でチャンツや歌を学んでいる子どもにとって、家でも英語の歌を流すことは自然な復習になります。学校で習った歌を一緒に歌ったり、YouTubeの子ども向け英語チャンネル(Super Simple Songs など)を流したりするのが効果的です。
英語絵本の読み聞かせを続ける
文字の習得より音声を重視する外国語活動の方針に合わせて、英語の絵本を「声に出して読む」体験は家庭でも大切です。意味がわからなくても、英語の音やリズムを聞かせるだけで価値があります。
外国・外国人への興味を広げる
外国語活動では「異文化理解」が大きな柱のひとつです。外国の料理を一緒に食べてみる、外国のお祭りや行事の映像を見る、地域のALTや外国人と自然に接する機会を作るなど、英語という言語だけでなく「外国・外国人への興味」を広げること**が子どもの英語学習の動機づけになります。
英語教材はCD・DVDなど「音声中心」のものを選ぶ
学習指導要領は「音声を取り扱う場合には、CDやDVDなどの視聴覚教材を積極的に活用すること」と指示しています。家庭で英語教材を選ぶ際も、読み書き中心のドリルより、音声・映像が豊富な教材のほうが、外国語活動の方針に合っています。
英語伝では、外国語活動の方針に沿った、音声・映像を中心とした幼児・小学生向け英語教材を幅広く取り扱っています。
参考資料