幼児からのフォニックス(Phonics)の科学的根拠(子どもの英語発音・読み書き力への効果)

「フォニックスって何歳から始めればいいの?」「うちの子、まだ小さいのにフォニックスは早すぎる?」など、幼児のお子さんを持つ保護者の方から、こんなご質問をよくいただきます。

フォニックス(Phonics)を学ぶのに早すぎるということはありません。脳科学・言語習得研究が明らかにしているのは、0歳~6歳という幼児期こそ、英語の「音」を吸収する黄金期であるということです。

米国国立小児保健・人間発達研究所(NICHD)の「全米読書パネル(National Reading Panel)」をはじめとする権威ある研究は、幼稚園児(5科~6歳)に対する体系的なフォニックス指導が、読み・スペリング・読解力に顕著な効果をもたらすことを示しています。

幼児英語教育に携わる方・おうち英語に取り組む保護者の方に向けて、科学的根拠にもとづいた幼児向けフォニックスの学び方・教え方・始め方を、情報元のURLとともに詳しく解説します。

 

フォニックス(Phonics)とは何か?幼児教育における役割

フォニックス(Phonics)とは、英語の「文字(グラフィーム)」と「音(フォニーム)」の対応関係を体系的に学ぶ学習法です。

日本語で例えるなら、「あいうえお表」の英語版のようなものです。「あ」という文字には「ア」という音が対応しているように、英語の “A” という文字には /a/(「ア」と「エ」の間の音)という音が対応している、というルールを学んでいきます。

英語圏では、幼稚園(4~5歳)からフォニックスが正式な教育カリキュラムに組み込まれています。たとえばイギリスでは2012年から全国的にフォニックス・スクリーニング・チェックが導入され、アメリカでも「サイエンス・オブ・リーディング(Science of Reading)」運動の中心に体系的フォニックス指導が位置づけられています。

一方、日本の英語教育ではこのフォニックスが長らく軽視されてきました。ハワイのバイリンガルスクール校長でもある英語教育専門家の船津徹氏も、「日本の英語教育ではフォニックス学習が抜け落ちている」と指摘しています。その結果、多くの日本人が “apple” を「アップル」と読んでしまう、英語の音が聞き取れないという壁にぶつかっているのです。

 

なぜ幼児期がフォニックス習得の「黄金期」なのか?

 

臨界期仮説(Critical Period Hypothesis)

言語習得には臨界期(クリティカル・ピリオド)があるという仮説があります。神経学者エリック・レネバーグ(Eric Lenneberg)が1967年に提唱し、その後の研究でも広く引用されてきた理論で、特に音韻習得(発音・音の聞き分け)は思春期前、場合によっては就学前の段階で急速に発達し、その後は習得が難しくなるとされています。

Lenneberg(1967)は、言語習得の臨界期を2歳から思春期(約14歳)と定義しました。特に音韻に関しては、より早い段階(9歳以前、あるいは音韻知覚については生後12ヶ月という研究者もいる)で感受性が低下する可能性が指摘されています。

もちろん、大人になってからでも英語学習は可能です(臨界期仮説への批判もあります)。しかし、ネイティブに近い発音・音の識別力を無意識レベルで習得するには、幼児期に英語の音にたっぷり触れることが最も効率的であるというのは、多くの研究者が認めているところです。

情報元(臨界期仮説・PMC論文)
情報元(Languages Alive 解説)

 

 0~6歳の脳は「音の吸収マシン」

生後6~9ヶ月の赤ちゃんはすでに、自分の母語に特有の音韻パターン(音の組み合わせ規則)を学習し始めていることが研究で示されています(Jusczyk et al., 1993など)。この時期の乳幼児は、世界中のあらゆる言語の音を識別できる能力を持っており、触れた言語の音に特化してその回路が磨かれていきます。

つまり、0~6歳のうちに英語の音を大量に聞かせることは、英語専用の「音の回路」を脳内に作ることにつながります。小学校以降にカタカナの読み書きが定着してからでは、この音の回路を後付けで作ることははるかに困難になります。

 

「幼児にも効果あり」を裏付ける研究エビデンス

 

全米読書パネル(NRP):幼稚園児への効果が「顕著かつ実質的」

アメリカ政府が設置した「全米読書パネル(National Reading Panel)」(2000年)は、10万件超の読書関連研究を精査した権威ある大規模メタ分析です。幼稚園児(Kindergarten)への体系的フォニックス指導について、次のように結論づけています。

「就学前の子どもにはフォニックス指導は早すぎるという通念があるが、データはこれを支持しない。幼稚園・第1学年における早期の体系的フォニックス指導の効果は、顕著かつ実質的なものであった。体系的フォニックスプログラムはこれらの学年に導入すべきである。」

また同報告書は、幼稚園児を対象とした研究で、体系的フォニックス指導を受けた子どもたちは読み・スペリング能力が有意に向上したとまとめています。

さらに特筆すべき点としては、低社会経済層の子どもに対しても、体系的合成フォニックス指導はアルファベット知識と単語読みのスキル向上に顕著に効果的であったこと、フォニックス指導の効果は、指導終了後も持続したことや、学習困難を抱える子どもへの効果量(d = 0.98)は、平均的な群(d = 0.41)を大きく上回ったことです。

情報元(NRP報告書・NICHD)
情報元(NRP プレスリリース)
情報元(Reading Rockets 解説)

 

幼児期の音韻認識が「将来の読み能力の最強予測因子」

Journal of Language and Literacy Educationに掲載されたHarper(2011)の研究では、就学前(Pre-K)の子どもたちを対象に、ナーサリーライム(英語の伝承童謡)を使った音韻認識トレーニングを実施した結果、実験グループの子どもたちは音韻スキルが有意に向上しました。

また、フォニミック・アウェアネス(音素認識)は将来の読み能力を予測する最も強力な指標のひとつであることが、多数の研究で示されています(Scarborough, 2001 / Reading Rope)。

「音韻認識を発達させることで、子どもたちはその後のフォニックス学習がはるかに容易になる。逆に言えば、早期の音韻認識トレーニングは、将来の読み困難を予防する効果がある。」(International Literacy Association, 2019)

情報元(Harper, 2011 / Dyslexic Advantage)
情報元(International Literacy Association)

 

EFL(外国語としての英語)環境の子どもへの効果(Frontiers in Education, 2017)

Frontiers in Education 誌に掲載された系統的レビュー(2017)は、英語を外国語として学ぶ(EFL)小学生を対象とした15の実験・準実験研究を分析しました。その結果、フォニックスを含む音韻ベースの指導は、EFL学習者の音韻認識・非語の読み(non-word reading)といった読みの基礎スキルに一貫して効果的であることが示されました。

また、歌・ボディジェスチャー・物語を取り入れた指導が、子どもたちの記憶と動機づけを高めるうえで特に有効であることも報告されています。

情報元:Frontiers in Education 誌に掲載された系統的レビュー(2017)

 

日本人幼児・EFL学習者への適用(TUJ研究・トムソン先生)

テンプル大学ジャパン(TUJ)大学院教育学部の研究論文では、日本人の若い英語学習者の音韻認識と読み能力の関係が検討されています。音韻認識トレーニング(ライム・音の融合・音素分節)と文字と音の対応の指示の両方を組み合わせることが、読み能力の発達に効果的であるという知見が整理されています。

情報元(TUJ・Tamai & Allen)

(参考)大人のフォニックスはこちらをご覧ください。

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