小学生の英語「聞き流し」の効果は?発達心理学と第二言語習得論を基に解説

幼児英語では「聞き流しは一定の効果はあるが、それだけでは不十分」とされています。小学生になった場合はどうでしょうか?

小学生の英語聞き流しは、条件付きで効果あり。ただし単独ではほぼ無効というのが、第二言語習得研究(SLA)と認知・発達心理学の共通見解です。それでは詳しく解説します。

 

小学生の聞き流しは「効果はあるが条件が厳しい」

小学生の聞き流しの評価では、効果はあるが限定的であり、聞くだけでは習得しないとされています。ただし、会話や理解活動とセットなら有効とのことです。

これは、第二言語習得研究の中核理論である「理解可能なインプット(Comprehensible Input)」に基づくものです。「理解できない英語は何万時間聞いても身につかない」ということ。

たとえば、関西学院大学の第二言語習得研究センターによると、注意(Attention)がないと学習は起きないとされています。人間の脳は「選択的注意」で処理するので、意識していない情報は記憶に入らない。つまり、BGMのような英語は「聞いていない」のとほぼ同じということです。

関西学院大学 第二言語習得研究センターQ&Aからの引用です。
https://www.cslar.com/qa/

私たちの脳には「選択的注意(selective attention)」と呼ばれるしくみがあります。そのため、意識的に注意を向けなければ、情報はほとんど記憶(インテイク)されません。

クラッシェンの理論では、「理解できる英語」だけが習得につながる。レベルより少し上が最適として、意味が分からない聞き流しは無意味に近いとしています。

ティーブン・クラッシェン(S. Krashen)の理論(モニター・モデル)では、第二言語習得において「理解可能なインプット」が最も重要であり、無意識的な「習得」が発話能力を生み出すと主張する5つの仮説です。特に、現在の能力(i)より少し上のレベル(i+1)の情報を大量に浴びる重要性を説いています。

基本的には「気づき(Noticing)」が起きないと定着しない。第二言語習得では、音を聞いて意味に気づいて、記憶化というプロセスが必要です。無意識の聞き流しではこのプロセスが起きないともされています。

 

 幼児との違い、小学生は「脳の仕組み」が変わる

幼児(2~5歳)は無意識吸収(統計的学習)が強く、親との相互作用が中心であり、音のパターンに敏感です。ですから、聞き流し+親の会話である程度、効果はありますが、小学生(6歳以降)の場合、論理・意味理解が発達しますので、ワーキングメモリが重要になり、「注意」が必要になります。つまり、無意識ではなく「理解型学習」に移行します。

幼児期の子どもは「統計的学習(Statistical Learning)」の能力が非常に高く、意味がわからなくても音のパターンを抽出して脳に蓄積できますが、小学生になると脳の特性が「無意識の吸収」から「意味の理解」へとシフトし始めます。

心理学者ジャン・ピアジェの発達段階説によれば、小学生(具体的操作期)は物事を論理的に捉え始めます。この時期の脳は、「自分に関係がない、意味のわからない雑音」を遮断するフィルター(選択的注意)が発達します。そのため、背景音として流しているだけの英語は、脳によって「環境音」として処理され、言語データとして蓄積されにくくなります。

ジャン・ピアジェ(Jean Piaget)は、スイスの心理学者で20世紀において最も影響力のあった心理学者の一人です。知の個体発生としての認知発達と、知の系統発生としての科学史を重ね合わせて考察する発生的認識論(genetic epistemology)を提唱。発達心理学者としては、「質問」と「診断」からの臨床的研究の手法を確立。教育理論における構成主義、子どもの言語、世界観、因果関係、数や量の概念などの研究を展開しました。

 

小学生低学年の聞き流しの効果

まだ「半分だけ幼児」なので、聞き流しは多少効きます。感覚学習と意味理解の中間にあり、音への感度はまだ高い状態です。

効果としては、発音・リズムには一定効果があり、語彙習得には弱い傾向があります。

研究的裏付けとしては、マルチ感覚(音+視覚+動作)で効果が向上する。つまり、音だけ(聞き流し)は非効率とされています。

低学年の最適形としては、聞き流し+動画、聞き流し+親との会話、聞き流し+ジェスチャーがよいとされています。幼児とほぼ同じ構造ですが、「意味理解」が少し必要になります。

 

小学生高学年の聞き流しの効果

聞き流しそれだけでは、ほぼ無効です。小学生高学年は論理思考が発達し、文法・意味処理が中心になります。この段階では、「聞くだけ」は学習として成立しません。

音だけでは意味処理できず、意識的理解が必要になります。また、アウトプットとの循環が必要です。第二言語習得の基本構造はインプット → 理解 → アウトプット → 修正となる。

小学生高学年の最適形としては、音声+スクリプト、シャドーイング、音読、会話練習であり「聞き流し」は補助ツールに過ぎない。

なお、小学生高学年になると、自我が発達し、「やらされている感」を嫌います。心理学者エドワード・デシの「自己決定理論」にある通り、自分で選んだコンテンツ(好きなYouTubeなど)であれば、聞き流しであっても脳の報酬系が作動し、学習効果が飛躍的に高まります。

エドワード・L・デシは、ロチェスター大学の心理学教授兼ゴウエン社会科学講座教授 、人間動機づけプログラム長。カーネギーメロン大学で社会心理学の学位を取得。 心理学分野では、彼の内発的/外発的動機づけや基本的心理欲求に関する理論によって知られています。

 

情報源(一次・準一次)

第二言語習得研究(SLA)関連論文(J-STAGE等)

関西学院大学 第二言語習得研究センターQ&A (関西学院大学 第二言語習得研究センター)

インプット仮説(クラッシェン)関連解説

SLAに基づく英語学習研究

 

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